2024年4月のアルバム

①Pinkcourtesyphone『Arise in Sinking Feelings』(Room40)

ミニマルなサウンドを追求する電子音響レーベルの老舗〈LINE〉主宰のリチャード・シャルティエによる変名アンビエント・プロジェクトの新作。その甘い響きの中に微かに蠢く棘のような硬さがたまらない。本作ではこれまでアルバム以上に、不穏さの中に持続する甘美な持続が美しい。リリースはローレンス・イングリッシュが主宰する〈Room40〉から。

 

②Madeleine Cocolas『Bodies』(Room40)

オーストラリア・ブリスベンを拠点とするサウンド・アーティストの新作。海/水の中を漂うような、もしくはその奔流に引き込まれるような音響作品であり、安らぎと不安が交互に押し寄せてくるような感覚が横溢している。微かな不穏と安らぎの交錯がもたらす音への臨死体験?こちらも〈Room40〉から。

 

③Bianca Scout『Pattern Damage』(sferic)

ロンドンを拠点とするサウンド・アーティスト/振付師/作曲家が、sfericからリリースした新作。ノイズ、環境音、アンビエントが渾然一体となったアトモスフィアな音響を構築・生成している。モノクロームのバレエダンス映像のように、エレガントでクラシカル。Bianca Scoutの新境地(?)とでもいうべきアルバムだ。

 

④Ulla & Ultrafog『It Means A Lot』(Motion Ward)

現代のアンビエントシーンにおける最大注目のアーティストUllaと東京のUltrafogの美麗なアンビエント競演作。アンビエントとモダン・クラシカル、そしてドリームポップ、シューゲイザーの残像などが渾然一体となり、まさに夢見心地の音響世界を展開している。夕暮れの世界のような黄昏の美しさがここに。

 

⑤Innode『Grain』(Editions Mego

Bernhard Breuer、Steven Hess、ラディアンのStefan Némethらによるユニットの最新作。しかもEditions Megoから!というだけで深い感慨を持ってしまう。硬質なミニマリズムを追求した尖端音楽/テクノの深化が本作にはある。

 

⑥(Thrill Jockey Records / HEADZ)

アンビエント作家が「歌い出すこと」。それは音楽家にとって特別なことではなくて、必然であったのだろう。なぜならクレア・ラウジーにとって全ての「音」は等価だからだ。そう、ここで声も旋律も環境音もすべてが同列にある。歌詞はメンタルのケアするような内容だが絶望はなく、自身をどうケアするかということが追求されている。歌い、演奏し、世界の音の耳を澄ます。優劣はなく、ただ音/音楽が、ただ「そこにある」ことへの希求と希望。