Evian Christ『Revanchist』(Warp /2023)

ポスト・ディスコンストラクション・トランス・ミュージック。「トランス/ミュージック」空間に内在(並行生成)する亡霊のごとき破壊の侵食。デジタルな画像/音響によって生成する崇高が、そのマシン的快楽を分解=rhizomeするだろう。意識の深層から世界の表層へ。粒子的情動が低音領域と高音響の振動によって解放され、やがて形式化された世界の理が崩れ落ちる。意識/感覚の別次元超克によって、ここにNeo dance musicとでもよべる「状況」が高速に構築されていく。過程と凍結。その果てに生成する甘く滴るような通俗的なダンス/ミュージックが、超高解像度のデジタル侵食によって無常のサウンドアートとしてリブートされる。世界。もしくは音響。いわば情動。その果ての振動。律動。解放。崇高。Evian Christのアルバムを聴くと、意識下に落ちてゆく感覚と情動がスパークする。さらに感覚と天空へと昇りつめる感覚がレイヤーされ、いつのまにか知覚が次元滑走を反復する…。都市の残像が虚構へと解体されゆくなか意識はノイズへとベクター化を果たす。妄想と現実の混合体が生まれるのだ。音はテクノ画像と化し、音は粒子化され意識層へとアディクトされてしまう。コード化されたトランスが人の意識の潜在に作用し始めるだろう。ここでは感情や感覚、そのすべてが分解される。WarpがEvian ChristとOneohtrix Point NeverとSlauson Malone 1を同時にリリースしたことは重要である。世界/セカイが高速粒子状態のまま反転/再生していることをプレゼンレーションしているのだから。われわれはセカイという量子世界へとサウンドを摂取することでトランスすることになるはずだ。21世紀。2023。『ブレードランナー』と『ニューロマンサー』と『ヴァリス』と『競売ナンバー49の叫び』と『ハイ・ライズ』にアクセスするように、『Revanchist』へと神経接続される。疾走する生成体と失踪する記憶。世界・精神・都市。混沌・破壊・陰謀・宇宙・崇高、そしてセカイへ。トランスの果てにある破壊と再生と崇高の世界。それは解体・分解された信仰のような電子的律動と電子的讃美歌と電子的鎮魂曲の多層世界的なプログラムのようですらある。そう、破壊されつつあるトランスで意識を振動/痙攣させるために。